【第1回】観察・アセスメントのための「スケール」のつけ方・使い方/各論1.JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール)/1.スケールの概要
執筆●佐野成美
聖路加国際病院 救命救急センター(救急看護認定看護師)
1.スケールの概要
①JCSとは
JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール、表1)とは、脳神経外科領域で開発1された、
意識障害の程度を評価するアセスメントスケールの1つです。
意識障害とは、目を覚ましている「覚醒」の程度と、自分が誰でどのような状況にいるのかを理解する「意識内容」の程度のどちらか、
もしくは両方の適切な反応が損なわれている状態を言います。
JCSはこのうち主に覚醒状況を迅速に評価でき、スケールも比較的覚えやすく、一般的によく使用されます。
また意識レベルの軽快と悪化の過程がわかりやすいので、術後の覚醒状況をみるときや、
患者の急変を発見したときなど、迅速に評価し、すぐに人に伝えるときなどに使用しやすいです。
■表1 JCS(ジャパン・コーマ・スケール)
採点ポイント
①“見当識障害”の鑑別では、答えの正しさをみると同時に、ぼんやりしていないか、反応の速さもみる
②“開眼”しなくても簡単な指示にスムーズに応じられれば、「JCS=10」となる
③異常肢位(除皮質硬直、除脳硬直)」では「JCS=200」。補足情報として肢位を書き込むとよい
②JCSの使い方
JCSでは「覚醒している=Ⅰ」「刺激に応じて覚醒する=Ⅱ」「刺激しても覚醒しない=Ⅲ」の3段階に分かれています。
まず始めに、患者の覚醒状況が、この3段階のどのレベルにあるかを評価します。
該当の段階のなかには、さらに3段階に意識障害の程度が分かれており、
そのなかでどのような反応を示すかを評価し、該当の数字がJCSの点数となります。
「覚醒している=Ⅰ」は1桁の数字で、「刺激に応じて覚醒する=Ⅱ」は2桁の数字で、
「刺激しても覚醒しない=Ⅲ」は3桁の数字で表され、数字が大きくなるほど意識障害の程度は深刻です。
例えば患者が“普通の呼びかけで開眼するレベル”だった場合、
刺激に応じて覚醒する=Ⅱ」のなかの「10」に該当するため「JCS=10」と表記します。
それに加えて「不穏(restlessness):R」「失禁(incontinence):I」「自発性喪失(akinetic mutism,apallic state):A」の状態があれば、
これらの状態を付加して表記します(例えば「JCS=10R」)。
②JCSの使い方
患者の状態として、本当は覚醒しており周囲の状況も認識しているのに、
何らかの理由で目を閉じて何の反応も示さないようなときがしばしばあります。
また、開眼はせず発語もなくても、指示にはスムーズに従えるような状況もあります。
JCSでは覚醒状況の判断として「開眼するか」がポイントとなっているため、
特にJCS2桁以下のレベルでは、開眼の有無のみでは重症度を正しく反映しないこともありえます。
このような場合は、「指示に従えるか?」(図1)もあわせて評価していく必要があります。
イメージとしては、刺激をしなければ眠ってしまう状態が「JCS2桁」、完全に意識のない状態が「JCS3桁」といった感じです。
■図1 簡単な指示の例
〈引用文献〉
1 . 太田富雄,和賀志郎,半田肇,他.急性期意識障害の新しいGradingとその表現法(いわゆる3-3-9度方式).
脳卒中の外科研究会講演集Vol.3.にゅーろん社,東京,1975:61-68.